【プレスリリース】機械学習を用いた液架橋力グリッパによる微小物の自動分類を実現
本研究のポイント
?固体接触を伴わない液滴による吸着で、脆弱かつ複雑形状の微小物を非破壊かつ柔軟に把持
?液滴サイズをビジュアルフィードバック[用語1]により制御し、液滴サイズと配置誤差の関係を定量的に解析
?電子部品、精密ねじ、ガラスビーズ等の1mm以下の微小物の物体検出、ピック&プレースの自動化により目標位置への精密な再配置に成功
?異種異形状の微小部品により構成されるMEMS?マイクロロボット組立に期待
研究概要
uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐の渕脇大海准教授らの研究グループは、独自に開発している液架橋力グリッパ[用語2]と機械学習による物体検出を組み合わせ、脆弱な1mm未満の大きさの微小物を分類し再配置することの出来るシステムの開発に成功しました。0.6mm×0.3mmの電子チップ部品、0.8mm長?0.6mm長の精密ねじ、0.3-0.8mmの異形状ガラスビーズの4 種類の1mm未満のサイズの物体のピック&プレース作業に成功し、物体 1 個あたりの平均作業時間は 86.0 秒、位置決め誤差は 157 ± 84 µm でした。複雑な形状の1mm未満のサイズの物体を非破壊で繊細にピック&プレースできることが実証されました。また、1mm未満のサイズの物体に適した液滴体積を調べるために行った液滴制御実験では、液架橋力がもたらす影響を定量的に分析し、液滴体積が小さいほど安定性が増して位置決め誤差が少なくなることが確認されました。この研究は、1mm未満のサイズの物体の自動分類と配置に向けた大きな一歩であり、マイクロマニピュレーション技術の進歩に寄与しています。将来的には、地質科学的な微化石の分類、医療分野での細胞操作、精密電子部品、微小機械部品の操作への応用が期待されます。このシステムは、現在は手作業に頼っている珪藻アートなどの職人技の再現も期待されます。

社会的な背景
近年、機械学習による画像認識を用いた物体検出に関する研究が拡大している。特に、機械学習を用いた自動マニピュレーションは、産業、食品、農業分野にまで浸透し、ますます拡大している。
また、自動マニピュレーションの対象は1mm以下の微小物にまで達しており、生物医療分野では、マイクロ流路(µTAS)を流れる細胞の自動認識?分類まで拡大している。しかし、大気中での脆弱かつ複雑形状を持つ微小部品のピンポイントかつ繊細なマイクロマニピュレーション技術は、未だに困難な技術課題の一つである。
研究成果
液架橋力グリッパと機械学習を組み合わせたサブミリ対象物の自動分類配置システムを構築し、その性能評価を行った。0.6mm×0.3mmの電子チップ部品、0.8mm長?0.6mm長の精密ねじ、0.3-0.8mmの異形状ガラスビーズ実験の結果、4種類のサブミリ対象物に対する自動Pick & Place作業を成功させ、1つの対象物当たりの平均作業時間は86.0[sec]であった。また、位置決め誤差は157±84[µm]であり、サブミリサイズおよび複雑形状の対象物に対するPick & Placeの実現可能性を示した。
今後の展開
微小対象物の精密操作が求められる様々な分野への応用が期待できる。例えば微化石[用語3]や珪藻などの地球科学的分析における分類、医療分野での細胞操作、精密ねじなど電子部品の仕分けなどが挙げられる。また、本システムを発展させることで、従来は手作業に依存していた珪藻アートなどの職人技の再現などもできると考えられる。
謝辞
本研究の成果の一部は2024年度高橋産業経済研究財団、NSKメカトロニクス技術高度化財団、中西奨学会の助成を受けました、研究室一同謝意を表します。
用語解説
[用語1]
ビジュアルフィードバック:カメラなどの視覚センサで取得した画像情報をもとに、ロボットや装置の動作をリアルタイムで制御?修正する技術や仕組み
[用語2]
液架橋力グリッパ:液体が物体とグリッパ先端との間に液架橋を形成することで生じる液架橋力を利用して、微小物体を把持?操作する装置
[用語3]
微化石:顕微鏡を使わなければ観察?鑑定できないほど小さい化石の総称。具体的には、有孔虫、放散虫、珪藻、花粉、胞子など、植物プランクトンや動物プランクトン、底生生物などの微小な生物の殻や骨格、有機物が地層中に保存されて長い年月を経て微小な化石に変化したもの。微化石は、地層の年代決定(示準化石)や、当時の海洋環境?気候の復元(示相化石)に役立つ重要な指標として重宝されている。
論文情報
掲載誌 | Advanced Intelligence Discovery |
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タイトル | Autonomous Machine Learning-Based Classification and Arrangement of Submillimeter Objects Using a Capillary Force Gripper |
著者 | Satoshi Ando, Naoto Watanabe, Chihiro Sekine, Shogen Sekiguchi, Ohmi Fuchiwaki |
DOI | 10.1002/aidi.202500068![]() |
資料
研究者プロフィール
渕脇 大海
大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 准教授
お問い合わせ先
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大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 准教授 渕脇 大海
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